« 2009.5.15 | Accueil | 2009.5.20 »

19/05/2009

サンプリング調査にご協力ありがとう。今回の調査の成果は人間と社会に関する考察に益するところ実に大であった。その考察を何の役に立てるかは今のところ未定ではあるが、いずれ何らかの形で還元させていただくこともあるだろう。

まあ、すぐに還元できるだけの内容は還元しておくかな。

たとえば。反応を見ていて結構驚いたのは、まともな人の比率の高さであった。概ね半数が、こういう趣味嗜好は社会から受け入れられるものではない、潜るの上等、と考えていることを表明している。web上で意見を表明しない人々のことを考えれば、この比率は更に上がるだろう。文意の汲み方も概ね冷静で正確だ。こういう方がこっそりその種のゲームをやっていたとしても、他人があれこれ容喙すべきことではあるまい。その種の嗜好が何らかの形で現実の行動に反映することもなさそうだ。模範的な地下生活者、とでも言おうか。

更に四分の一ほどが、潜っていても暴かれるんだよ、と訴えている。これは事実であろう。ただまあ、人間と言うのは、わざわざ石をはぐってその下で営まれている『ダーウィンが来た!』な世界を見付けては「ぷぎょわーっする」(秀逸な表現だ)のを好むものなので、その辺りは踏まえた上で、怯むことなく更に深く潜航していただきたい。

残る四分の一が色々な意味で微妙にやばい方たちだ。個人的な感触からすれば、声を上げない第一類の方の割合はもっと高いであろうと推測されるのと同様、この四分の一の現実の比率はより低いだろうと思われるが(おそらくネット親和性の非常に高いセグメントだ)、とは言え、無視できるほど少なくはないだろう。

一見して印象的なのは、この第三類に属する人々が過剰に自己防衛的であることだ。自らを性的マイノリティと称し(大丈夫、そんなことはありません)、差別を受ける側として自己定義している。故に、拙文に対する反発も激しく、文意の汲み方も不正確である。ただ攻撃されたということだけに反応している、と言おうか。吊りじゃないの、という疑念さえない(吊りでなかったことは断言しておこう——煽りはしたが)。で、この先は、そうした方々に対する助言としてお読みいただきたい。たぶん、字面見ただけでぶち切れちゃってちゃんとは読めないだろうが、まあそれはいいとしよう——文の喧嘩ってのは相手を叩くことじゃなく、叩いて見せることに意味があるからね。本当の決着はこんなところじゃ付かないよ。

第三類の方々の最大のミスは、いきなり世間を向うに回して戦ってしまうところにある。故に噛み付き放題だ。味方になるかもしれない人にまで噛み付く(例えば私だ)。その一方で、現実に自分たちの活動(まあ、ね)の障害になっているものに対しては全く認識がないか、味方だと誤認している。その最大の原因は、浮世とは何でありどう動くかというメカニズムに対する認識の浅さだ。と言う訳で、その辺に関する私の認識を表明しておこう。今後の戦略立案のお役に立てれば嬉しい。

まず第一に、この種の表現は、たとえ憲法によって「表現の自由」が保証されているとしても、社会的に受け入れられることは絶対にない。容認されることさえまずない。理由は簡単で、女性のほぼ全てが現実の世界における同種の犯罪の試み(もちろん実践の為には相当な努力が必要ではある訳だが、とはいえ試みる奴がいない訳ではない)に脅かされている乃至脅かされていたことがあると感じているからだ。男性の相当数も嫌悪感を持っている——そういう連中と一緒にされることに対して、かもしれないが。

ここのところ、ちゃんと頭を冷やして読むように。ゲームが即実践に繋がる訳ではないことは、誰もが承知している。それでも嫌悪と恐怖は押さえがたい。感情論であることは間違いない。ただし、感情論を克服することは、感情論であるだけに、非常に困難だ。克服させることに至っては事実上不可能である。

従って、社会の過半数はこの種のゲームに対してそもそも敵対的だ。ひとつきっかけがあれば袋叩きの様相を呈するのは当り前である。

(それから、あちこちのブログのコメントには「いっぺんやってから言え」という書き込みが散見されるが、あれはやめておいた方がいい。感情的な嫌悪を押さえられない彼女らに「いっぺんやってから」というのは、コートを着て側にやって来て、前を開いて剥き出しの下半身を露出する変態の所業のようにしか見えない。画面入りのリプレイや攻略のサイトがあるから、そちらに誘導する方が得策であろう。感情論だと批判する人、感情論に感情論だと言っても火に油を注ぐだけである。だって感情論なんだから、であり、感情論は残念ながら常に正しい——色んな意味で)

第二に、当該ゲームおよびそれに類するゲームを制作・流通させる企業は、上記のような敵対的環境で活動している。そうした企業が生き延びるためには、当然、柔軟な姿勢が必要だ。とはつまり、圧力が掛かれば即座に出荷を停止、ということになる。ゲーム会社に限らず、製品が社会的な非難を浴びた企業が即座に出荷停止、回収に掛かることを考えれば、これは必ずしも例外的なことではない。出版物でもしばしば見られることだ(エロでは滅多になくなったが、天皇制および差別語問題ではよくある)。

第三に、第二のような事態に直面するか、直面する可能性のある企業、およびその複合体としての業界は、自粛と自主検閲に走る可能性がある。実を言うならこれが表現する者にとっても表現を享受する者にとっても最悪の事態だ。活字出版物はそういう状況に、とっくに、ごく普通に、置かれている。

個人的な経験からお話ししよう。ある種の表現には、ゲラの段階でチェックが入る。「よいですか」と書いてあることが多い。突っぱねて戻すとしよう。再度、編集者から「相談」が来る。法務が、と言って来ることが普通だ。極めて日本的な、自分には一切権限がないから交渉は受け付けないという物言いであり、それでも突っぱねることは非常に困難である。何を言っても、でも法務が、の一点張りだ。稀に、そうしたチェックを漏れた出版物が市場に出回ることがあるが、即座に版元回収と相成る。初刷売り切りが当り前のご時世にあっては、これは致命的だ。「訂正版」が再度書店に並ぶかどうかさえ怪しい。出ても時期を逸している。雑誌だった場合には編集部や出版社との関係がこじれる。トラブルメーカーという噂が立ち、その後の取引先も激減する。だから作家は大抵、この自主検閲を受け入れている。情けない話だが。

普通に市場に流通させる、とは、そういう状況を受け入れることであり、普通に市場に流通するものを享受するとは、そうした検閲済みのぬるいものを享受する、ということだ。だから私は地下に潜れ、と言うのである。無検閲自粛なしのものを自由に発表したり享受したりできる場所は、実際には地下しかない。その地下にさえ、手入れはしばしば入る。官憲の弾圧を、と言うのは、勿論、受け入れられるには長期間にわたる粘り強い活動が要求されるやばいものに関わっている自覚を促している訳だが、可視化された圧力は、圧力を掛けている実体が見えない(発売元は、業界団体が、と言い、業界団体は、国が、と言い、国は、外圧が、と言うだろう——責任はいったいどこにあるのか。誰に対して反対を表明すれば有効なのか)圧力よりはるかに扱いやすいからでもある。現状では、発禁も焚書もないまま、誰にも知られることなく、表現は葬り去られるのだ。

徹底して反社会的なもの——とはつまり、第一に挙げたような白眼視を免れず、第二に挙げたような状況を前提として第三のような事態に至ること必至のものを発表するなら、私は当然、地下出版を選択する。今のところそれがないのは、そういうものを直裁に(とは比喩的な表現を介さずに)書く必然性を感じていないからだ(比喩的に書くことの方が面白い、というところはあるけどね——今のところは)。必要のある人の場合には、当然、地下を選択すべきである。

それからゾーニングを主張する人、十五禁だの十八禁だのを喜んで受け入れる奴なぞ表現者ではない。ただの商品の製造業者だ。商品が市場に翻弄されるのは当然である——今回の事態はそれだ。ゾーニングの徹底では何一つ解決しない。ゾーニングは悪質化を招くだけだから全面解禁を、と言う人、ゲームが悪質化して何が悪いのか。むしろ地下に潜って徹底して悪質化すべきではないのか。更に、佐藤亜紀の著作を焚書に、と言う人。焚書は近年作家が浴したことのない最大級の名誉である。喜んで浴させていただくから、派手な場所で派手な炎を上げていただきたい。よろしく。


|

« 2009.5.15 | Accueil | 2009.5.20 »

TrackBack


Voici les sites qui parlent de: 2009.5.19:

» [エロゲ]「だがそれがいい」 [極南の空へ]
普通に市場に流通するものを享受するとは、そうした検閲済みのぬるいものを享受する、ということだ。 2009.5.19: 日記 だがそれがいい、というかむしろそれでいい。 その現状で問題はないというか、むしろ世間様の倫理とのせめぎ合いのなかで発達してきたのが文学でありまた... [Lire la suite]

Notifié: 21/05/2009 03:09

» [【時事・ニュース】]しつこく前回の続きのような続きでないような日記。 [冒険野郎マクガイヤー@はてな]
アプリオリな男女平等について  私はそれなりにいい年こいたおっさんなので、会社で仕事する時も業務内容によっては部下的な後輩社員が一人か二人ついたりすることがある。色んな事情で、定時に終わる予定の仕事が夜10時とか11時とかまで伸びたりすることもあるのだが、そ... [Lire la suite]

Notifié: 23/05/2009 22:33

« 2009.5.15 | Accueil | 2009.5.20 »