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23/03/2009

昨日、伊藤計劃氏の実家にご挨拶に伺った。

家族の方は生前の写真を数枚、遺体の傍らに飾っておられた。遺影は伊藤氏と言えばこれ以外に考えられない、黒ネクタイと黒ジャケットにキャップをかぶり、映画館の前で屯していると現れる時と同じ、幾らか恥ずかしげな、生真面目な、それでも人なつこい笑みを浮かべた写真であった。他の数枚は大学時代に友人に撮って貰ったものだそうで、撮る側撮られる側双方の若々しい気負いが印画紙に鮮やかに留められていた。

ところで私はと言えば、伊藤氏と初めて対面したのがいつだったか、昨日一日考えていたが一向に思い出せないのであった。最初に尋ねてくれた人には吉川新人賞の発表の時、と言い、いやその前にTRPGをしてるでしょ、と言われ、今朝になって漸く、ジュンク堂での対談の時だったことを思い出した。編集の人に、伊藤計劃氏来てます、と言われ、この機会を逃したら知り合う好機はもうないような気がして、慌てて飛んで行って呼び止めたのが最初だ。あれから何度か、他の友人たちと一緒に、映画を見た。実を言うならこれからも見るものだと思っていて、実家の座敷に横たえられた姿を見た後も、それはもうない、ということがどうしても呑み込めなかった。

という訳で、伊藤計劃氏にお別れを言うことは、私には難しい。遺体の前を辞去する時も、お見舞に伺った時と同じように、またね、と言うことしかできなかった。何とはなしにまた会えるような気がしているからであり、どうしてもそういう期待を断念する気になれないからである。

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