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31/12/2007

大雪を前に新潟から帰って来る。老いたる両親を豪雪の中に放置して離脱してきたのは少々問題ありという気がする。一晩一メートル積ったら緊急帰省必至だな。

ともあれ、まだ終らない短編を除き、今年の御予定はこれにて一応全消化である。

「ミノタウロス」を仕上げて虚脱し、突貫工事で「バーチウッド」をやって余計虚脱していた割には色々あった一年であった。「ミノタウロス」がここまで読まれると思っていなかったのでちょっと驚いた。もちろんこれは、あちらやらこちらやらで猛プッシュをして下さった書評家の方々のおかげでもある(西の方のラジオ番組で押して下さった方もおられた——この方の番組中の引用部分がちょっとない視点で選ばれていたのは嬉しい驚きであった。そこを読んでいただけるのは作者冥利に尽きる)。更に、出版後非常に早い時期に感想を書いて下さった方も含め、ブログで取り上げて下さった方々にも御礼を申し上げたい。褒めていただくのは勿論嬉しいが、批判的な感想も、兎も角感想一回ではある——的確な批判は勿論役に立つし、的外れな批判で恥をかくのは別にこちらではないしね。何にせよ、自分の本がどう読まれたのかを確認できるのは、作家にとっては間違いなく励みになることではある。十年前には考えられなかったことだ。作品の評価がより広い層に開かれて行くのは、業界の思惑絡みの評価に保護を求めなければならない作家でもない限り、歓迎されるべき状況であろう。

一応、読んだ本のうちからベスト3を。

フランソワ・フュレ「幻想の過去—20世紀の全体主義」バジリコ
二十世紀を支配した「革命」の幻想にさよならするための必読書であろう。左だけではなく右をも「革命」として捉えたところが秀逸。ムッソリーニ政権を支えたものが何だったのかという分析は、あまりに今日的すぎて全文引用でご紹介したいくらい。何となく過去のものになったように思えるソ連万歳史観に執拗に異を唱える部分が多少くどく感じられるかもしれないが、ついこの間まで自称インテリはそういう「史観」に支配されており、今でも部分的には影響を有しているのを感じる機会があっただけに、論の展開くらいは押えておくべきかもしれない。何より、高校の世界史の近現代史部分の記述の謎がよく解ける。結構偏向教育だったよな、あれって。

岡田祐成・齋藤晃「南米キリスト教美術とコロニアリズム」名古屋大学出版会
本文のみならず写真もほぼ後半分を占める資料編も素晴らしい。ウルトラバロックを単なる征服と抑圧の産物としてではなく、先住民からの応答としても捉える視点が新鮮である。兎も角読みごたえがある。

伊藤計劃「虐殺器官」早川書房
これはもう言うまでもない。少しでも敏感な感受性を具えた人間なら肌で感じている筈の閉塞と絶望を、もはや我々の切除不可能な一部となったサブカルチャー(いや、これもまた閉塞であり絶望なのだが——ピザ取ってモンティ・パイソン。嗚呼)を介して語った作品。その問題作ぶりには無条件に敬意を表すべきであろう。もちろん、しつこく言い募るのは伊藤氏の将来にとっていいこっちゃないということを百も承知で言うなら、こういう作品を特定ジャンルの作品としてどうこうと批判する人がいたのには正直言って驚きだった。SFはいつからこうも鈍感な人々のものになったのか。

ちなみにワーストはラカン派社会学とかいう怪体な視点からネオリベラリズムを分析してみました、という新書。シラク政権下の学生運動を語る辺りでちょっと臭いものを感じたのだが、後ろの方で、それに先立つ暴動の人々を平然と「アラブ人」と呼んだところで思わず罵声を発していた。あんた何様のつもりだ? 幾つ学校を出たって、人にスリに気を付けてねと注意したついでに、一言「もちろんフランス人はそんなことしないわ、するのはアラブ人」とか言うバカさ加減は治らないんだな。あの連中はあんたなんかよりよっぽどフランス人なんだよ、覚えとけ、馬鹿女。この女の凄まじい鈍感さについては年が明けたら改めて再度罵倒する予定である。乞御期待。

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久々にホッテントリを見ていて、書評サイトと作り手(作家と編集者)側の関係が話題になっていることを知る。きっかけはこちらでいいんでしょうか。 書評サイトに対する作り手側の視線 - ラノ漫--ライトノベルのマンガを本気で作る編集者の雑記-- 遅ればせながら、思うとこ... [Lire la suite]

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