« 2005.8.25 | Accueil | 2005.8.28 »

26/08/2005

五歳くらいの時であろうか。父親のむかしの同僚の家に連れて行かれた。そこのうちには一つか二つ上の男の子がいて、私としては彼が大いにこっちの暇つぶしになってくれるだろうと期待していたのだが、そうは行かなかった。テレビが「サンダーバード」をやっていたからである。仕方がないから横に並んで見始めたのだが、うわっ、何これ変な口パク、ダサいメカ、ドラマがねえ、萌えもねえ、面白くねえ、なのであった。以来三十年近く私は「サンダーバード」に全く無関心であった。亭主がいかにサンダーバード二号を褒め讃えたって無駄である(だからって虐めはしなかったが)。

私は間違っていた、と思ったのはBSの再放送を見た時以来である。これは驚きだった。何と言おうか、漲る土木工事感、なのである。困難は専ら、車両の重みに耐えかねて路肩が崩れる、とか、機器の強度が不足だ、とか、重量過剰による摩擦の増加でタイヤが火を噴くとか、コンマの差でドッキングに失敗したが、しゃあねえ、時間ないんでこのまんま行きます、とか、なのであった。他は何もない。つまり、五歳の頃の私は、難工事がいかに技術的に解決されたか、ではなく、登場人物AとBには確執があり、それが現場で火を噴いて「貴様ぁ」「何をぉ」と襟首掴み合うのを期待していたのである。もちろんその後にはCの「見損なったわ、 A君のバカっ」平手打ちぴしゃっ、が続き(いや、別に女性キャラじゃなくてもいいんだけど、女っ気皆無ってのも何だし)、AとBは漸く本腰入れて仕事を始め、お前、なかなかやるじゃないか、とか言い合って同人女を刺激し、当然Bには死亡フラグが立っていて犠牲になるが(いやもちろん、世にもこっ恥ずかしい台詞を伴う自己犠牲で同人女を更に刺激)、工事は無事終了、みたいなのが見たかったのである。

最近はそういうのを見ると苛々する。貴様らさっさと仕事をせんか、とか言いたくなってくる。実際、学生のD&Dリプレイ小説にケチを付け、じゃ何を書けばいいんですか、と困られたこともある。ご参考までに書いておくと、

・パーティの人数を二手にわけても機能するほど増やすんじゃねえ。だりい。三手分九人? 単位やらねえぞ。
・だから話を平行させる? 危機の最中に合流して一気逆転とか狙ってねえだろうな。落とすぞ。
・ミッションと関係のないことで「貴様ぁ」「何をぉ」ってのはなしな。
・パーティ内での恋愛は御法度な。
・三角関係は絶対に御法度な。
・謎の過去を抱えたキャラ、ってのは、一名だけでもなしな。
・過去持ちキャラ二名以上で悶着必至? おまけに三角関係? ふてえ奴だ、単位欲しくないのか?
・手遅れになり掛けてからじめじめ身の上話をする、ってのはなしな。
・話がちゃっちゃと片付かないのはそいつが黙ってたから、ってなしな。
・敵キャラとの因縁でじめじめ悩むってのもなしな。
・敵キャラ実は親? 貴様死にたいか。
・自己犠牲なしな。事前事後の愁嘆場が延びてかなわんから。
・ラスボスとの戦いの前に、今回の仕事の意義について延々と御託、ってのはなしな。どうしてもやりたければそいつが、「ヘンリー四世」の時のケネス・ブラナーくらいには喋れるってことを証明してみろ。

「じゃ、何を書けばいいんですか」
「プロが脇目も振らずにさくさく仕事をすればいいんだよ」
「それじゃ話がすぐに終わってしまいます」
「作業自体の難易度を上げなさい」

ま、つまり、今となっては土木工事こそ王道なのである。

その意味で、テレビ版の「Uボート」は土木工事感溢れる傑作なのであった。見ながら「貴様ら作業中に何を遊んでおるかぁっ」と叫ぶ必要がないのはありがたい(ついでにその後は「地方では何をやっていたか知らんが」と続く訳だが、うん、大抵、画面じゃ地方で何をやっていたか話してるね)。土木工事感漲るという点では、「バンド・オブ・ブラザース」(一冬夏服のまんまアルデンヌの森の中でタコツボに入ってました、とっても寒かったです、ドイツ軍はむこうでクリスマスしてました、って話は泣ける)を越える。何しろ前半は不漁の漁船みたいな話だし(グランドバンクスまで出漁するんじゃないかと心配したよ)、クライマックスは二十時間撃沈されていた間に猛然と修理するだけだしね、別に誰もドジ踏んで死んだりしないしね、自己犠牲もなしだしね(どうしても必要なのか、あれは)、ストレスでいきなり神経切れる奴はいるけど、しゃあなくて復活して来るしね。しかしイギリス軍が見てたらすごい光景だっただろう。いやあ、浮いてこないね、そろそろ二十時間だね、死んだかな、とか言ってたら、ざっぱぁーん、と浮上して来て、凄い勢いで逃げていく、ってのは。

いや、でね、何が言いたいかって言うと「ローレライ」見ちゃった訳ですよ。うざい。ストーリー死ぬほどうざいよ。山のように死亡フラグ立てるし。これ順にこなす気な訳? まじで? でもって、長い、長い、長い、長さのほとんどがいらん話だ。特に東京で魔王化してる奴の話、あれ、訳わからん。ダイアローグが猛烈に聞き取りにくいってのはあるけど、聞き取れたって訳わからん。有効性が理解できん。焼け野原の東京に今更核落としてどうするのか。必要なのか。本当に。あと十五分って時間切った癖に、そこでじめじめじめじめじめじめだべって時間を無駄遣い。それに何なんだ、あの米艦隊は。太平洋中の駆逐艦集めたのか。何故、東京に原爆が投下される、出撃基地を破壊せよ、というシンプルな土木工事話にできないのか。それからさ、何でエンディング、役所広司が潜水艦に白旗挙げて魚釣りしながら漂流してる、空は抜けるように青くて今日もみんな元気だ、じゃいけないの。それからあの変な服着た女だが、がぶがぶのつなぎ着たきゃぴきゃぴ女では何故いかんのか(何なら語尾に「お」とか「にょ」とか付けてもいいぞ)。何故一々変な服を着せるのか。一々暗いのか。みんな、明るくさくさく仕事して、さっさと家に帰ろうよ、ね。

で、実は「捕虜大隊」の続きを待っておるのです。全然土木工事ではないのですが、何か面白い訳です。既に死亡フラグの立っている奴が山のようにいるのですが、予断は許されない状況なのであります。大体において、味方の倉庫襲って食いものせしめているような連中が、自分は猛烈に好きなのであります。

専ら味方と戦ってる話が好きな人、エミリオ・ルッス「戦場の一年」読みましょう。将校食堂で「我々はローマに向かって進軍すべきだ」と演説ぶっても、まあまあまあ、で済まされちゃう軍隊の話です。ただし、みんな狂ってます。将校の一人はシラミにぶちきれて中のものを全部焼き捨てたんで、外套の下は何も着ていなかったりします。それをわざわざ主人公に見せに来ます。将軍は完全に狂っているので、死なないかなとみんな思っていますが、不死身です。突撃の時に強い酒を一気飲みして行動不能に陥ってる奴、とか出てきます。兵隊にチョコと酒を配ると「明日は突撃かよ」「やれやれ」とか言っています。でもってゴミのように死んでいきます。

言っちゃ悪いけど、こういうの、最高だよね。

|

« 2005.8.25 | Accueil | 2005.8.28 »

TrackBack


Voici les sites qui parlent de: 2005.8.26:

« 2005.8.25 | Accueil | 2005.8.28 »